次論公論

 
21
 
僕は日本人に近視が多いのは人災だ、もう少し穏やかに言えば、僕ら眼鏡士や眼科医が人為的に近視を促すような眼鏡を作り偽近視を本格的な近視の眼に作り替えている恐れがあると言ってきた。実際にお店で初めて眼鏡を作るお子さんには必ず処方箋を持ってきてもらう。たいがいその処方箋は近視だ。だがその内の半数以上、およそ6割に僕は遠視の潜伏を疑っている。

疑うだけでは何も変わりが無いので実際にそういった遠視の潜伏を疑った場合には最初に手元用眼鏡を作る。世間でいう老眼鏡に近いような凸レンズで作るケースが多い。それで上手くいけば、緊張が外れ、装用者ご自身の本来持っている屈折異常である遠視の度数が顕在化する。そうなってくれれば常用眼鏡として遠視の眼鏡を作ればいい。またそうそう上手くいくケースばかりでもなく、頑固に近視のままで変化無しの場合もある。そういったケースでも手元用と遠く用で度数を調整し、極力過度な調節を入れずに手元を見られる環境を整備し、近視で縛らずに近視の進行を防ごうと心掛ける。

今日ご紹介するケースはA君(11才 男性)の場合で、彼はここ半年ほどで視力の低下を自覚し、先日眼科医にかかり近視の処方箋をグラシアスに持ってきた。勿論お父様にも事前に眼科医に掛かってからご来店下さいと伝えてある。早速処方箋を見るとやはり両目共に近視の処方度数が記されている。

裸眼の視力は

右目は0.3

左目は0.3

両目で0.4

という状態だった。

試しに処方箋を掛けさせ40㌢で近用視力表を見させると老眼です。と言わんばかりに調節力が足らないと検査の結果は示す。こういった状態になる事がおよそ6割だと思って頂きたい。

そこで+1.00加入してほぼ裸眼の状態で手元を見させる。それでも緑寄り、調節力が足らないと言われる。そうやって徐々に度数を加えていき、結局+2.00加入で手元用の眼鏡をお作りした。

これで過度な緊張壁が抜けて裸眼視力が改善すればベストだが、それで裸眼視力が改善しなかった場合には遠用に弱い近視の眼鏡をお作りしますと二段構えで提案させていただいた。業界の方々には釈迦に説法であるが、一般の方には簡単にご説明したい。何故こういった事が起こるのか?

調節力が加齢と共に低下し手元の近業作業に疲れを伴ったり霞んだり、滲んだりする状態を老眼と言う。今日の検査をしたA君は11才。調節力は有り余っている状態な筈だ。それなのに何故こういった事が起こるのか?

ここは仮説であり、私見でもあるが、

「調節力が有り余っているから、近視で縛る事が容易に出来るのだ。」

もう少し具体的に言えば、人は遠視であろうと近視であろうと調節度の大小はあるが必ず水晶体を膨らましてピントを調節して焦点距離を目的距離に合わせて手元を見る。ところがまだ成長過程でもあり、ふんだんに調節力のあるお子さんはそれが無意識に調節し過ぎてしまうのだ。ここが怖い所で過度な調節を本人は意識せず視力の低下だけを自覚する。勿論過度かどうかの判断は自分ではつかない。

ここまでは仕方がないのだが、それが眼鏡店や眼科でも分からない。これが一番の問題なのだ。例えば今回のA君のケースであれば近用の視標で調節力の不足を検査結果として確認すれば僕が眼科ならば調節麻痺剤を点眼する。その上で近視かどうかの判断をすべきだと僕は思う。だが今日A君にもA君のお父様にも確認したが、そんな点眼はされていないとお答えいただいた。それはつまり遠見の視力だけを重視し、近業作業時のストレスを軽視している。いわば視力至上主義の弊害だと僕は言ってきた。ちなみに今回のA君のケースでも左目の輻輳にストレスが生じていたので左目に上下斜位と水平方向のプリズムを集中し輻輳近点を揃えた。つまり遠視の潜伏に気づくだけでは片手間だという事だ。僕はいつの日かどこの眼科や眼鏡店に行ってもこの程度の検査は当たり前、その上で僕らはサービスや腕を競い合うべきだと思うのだ。

現状はその目標には程遠いと言って差し支えないだろう…。

いつの日か、近視の人口に対する比率は変動し近視は減ると大胆にも僕は予測する。つまり眼鏡店で近視の眼鏡が購買比率として下がるという事だ。一方、PCやスマートフォン、タブレット。こういった手元作業時には遠視であろうと近視であろうと、また視力に問題の無い正視であろうと誰もが眼鏡を掛けて作業する時代が来ると僕は思っている。つまり眼鏡店のメインの役割は近視の進行により度数を交換する近視用眼鏡から、近業作業用の手元用眼鏡がメインの業務になり業務内容に変化が起こると予測している。本当にそうなるのかどうか、それは僕のこれからの取組次第だし、僕の意見に賛同してくれる方がどれだけ増えるかに掛かっている。


今回の検査データーもいつものサイトにアップしておきます。宜しければご覧になってみて下さいね。

Comment

2011.05.21 Sat 15:02  |  承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
  • #
  • Edit






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可

Trackback

http://opteriaglassias.blog92.fc2.com/tb.php/1692-cb45e6d8

この記事にトラックバック(FC2Blog User)

Home

眼鏡屋の店長のブログです。

初めていらした方は、最初に僕の【プロフィール】を見ていただくと僕のスタンスが分かるかと思います。

また業界用語が数多く出てきますので、その場合は【次論公論用語解説】をご参照下さい。

ちなみに【グラシアス文庫】では小説も書いてるよ!!!

ランキング参加しています。
良かったらクリックお願いします。

グラシアスの店長

FC2ブログランキング

カテゴリー



最近のコメント

月別アーカイブ

2017年 08月 【18件】
2017年 07月 【18件】
2017年 06月 【25件】
2017年 05月 【26件】
2017年 04月 【21件】
2017年 03月 【23件】
2017年 02月 【20件】
2017年 01月 【19件】
2016年 12月 【28件】
2016年 11月 【24件】
2016年 10月 【22件】
2016年 09月 【21件】
2016年 08月 【21件】
2016年 07月 【6件】
2016年 06月 【11件】
2016年 05月 【12件】
2016年 04月 【5件】
2016年 03月 【7件】
2016年 02月 【4件】
2016年 01月 【4件】
2015年 12月 【15件】
2015年 11月 【17件】
2015年 10月 【10件】
2015年 09月 【15件】
2015年 08月 【22件】
2015年 07月 【14件】
2015年 06月 【6件】
2015年 05月 【13件】
2015年 04月 【3件】
2015年 03月 【13件】
2015年 02月 【15件】
2015年 01月 【11件】
2014年 12月 【20件】
2014年 11月 【16件】
2014年 10月 【12件】
2014年 09月 【9件】
2014年 08月 【26件】
2014年 07月 【28件】
2014年 06月 【33件】
2014年 05月 【33件】
2014年 04月 【32件】
2014年 03月 【32件】
2014年 02月 【29件】
2014年 01月 【32件】
2013年 12月 【38件】
2013年 11月 【34件】
2013年 10月 【33件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【36件】
2013年 07月 【33件】
2013年 06月 【29件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【25件】
2013年 03月 【30件】
2013年 02月 【24件】
2013年 01月 【26件】
2012年 12月 【29件】
2012年 11月 【39件】
2012年 10月 【42件】
2012年 09月 【31件】
2012年 08月 【39件】
2012年 07月 【37件】
2012年 06月 【32件】
2012年 05月 【26件】
2012年 04月 【47件】
2012年 03月 【39件】
2012年 02月 【42件】
2012年 01月 【45件】
2011年 12月 【48件】
2011年 11月 【41件】
2011年 10月 【58件】
2011年 09月 【47件】
2011年 08月 【44件】
2011年 07月 【52件】
2011年 06月 【44件】
2011年 05月 【49件】
2011年 04月 【44件】
2011年 03月 【57件】
2011年 02月 【47件】
2011年 01月 【47件】
2010年 12月 【44件】
2010年 11月 【49件】
2010年 10月 【59件】
2010年 09月 【28件】
2010年 08月 【28件】
2010年 07月 【29件】
2010年 06月 【25件】
2010年 05月 【24件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【29件】
2010年 02月 【29件】
2010年 01月 【29件】
2009年 12月 【29件】
2009年 11月 【32件】
2009年 10月 【37件】
2009年 09月 【30件】
2009年 08月 【30件】
2009年 07月 【26件】
2009年 06月 【33件】
2009年 05月 【32件】
2009年 04月 【28件】
2009年 03月 【31件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【30件】
2008年 12月 【31件】
2008年 11月 【29件】
2008年 10月 【31件】
2008年 09月 【28件】
2008年 08月 【24件】
2008年 07月 【31件】
2008年 06月 【24件】
2008年 05月 【32件】
2008年 04月 【27件】
2008年 03月 【27件】
2008年 02月 【28件】
2008年 01月 【29件】
2007年 12月 【26件】
2007年 11月 【27件】
2007年 10月 【35件】
2007年 09月 【28件】
2007年 08月 【27件】
2007年 07月 【32件】
2007年 06月 【32件】
2007年 05月 【31件】
2007年 04月 【26件】
2007年 03月 【32件】
2007年 02月 【18件】
2006年 03月 【1件】
2005年 03月 【1件】
2004年 03月 【1件】

最近の記事

アンケートコーナー

ブログ内検索

プリズム次郎の用語解説


リンク

アクセスカウンター

最近のトラックバック

RSSフィード

ブロとも申請フォーム